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2013年7月23日
バスで康定を後にし、次の町”甘孜(カンゼ)”へ。
14時間のバスの旅であった。

甘孜着後、やはり客引きに連れられ、道路の上に渡り廊下状にまたがっている建物の二階の旅館へ。

ドアを入るとすぐ、大きなベッドがあり、暗くてよく見えないが誰か寝ている。
どうも入ってすぐが旅館の家族の居住スペースで、その奥のほうに客室があるらしい。

しかし、客室を見せてもらうとなかなか綺麗で、何より”無臭”なのが良い。窓が大きく街のメインストリートが見下ろせるのも気に入り、泊まる事にした。
(夜になってわかったのだが、この旅館の上がカラオケ屋で、中華風ともチベット風とも付かない歌声が大音響で降ってくる。これが深夜まで続くのだが、獣臭やトイレ臭より100倍マシである)

この旅館でのできごとは、私にとって印象深いものになった。

登場人物は、この旅館の娘、6歳である。

バスが運行している時間、両親はバスターミナルに客引きに行ってしまう。
その間、旅館の入り口を見ているのはこの女の子であり、テレビでアニメ等見ながらその場を守っている姿は、健気なものだと思っていた。
あるとき、その子が私に話しかけてきた。しかし、言葉が通じずうまく伝わらない。
娘は私の手を引っ張ってテレビの前に連れてきて、テレビのチャンネルを変え始めた。
しかし、娘の思う番組がやっていなかったのか、その場はそれで終わった。

その後、夜外出して戻ってきたとき、その子が火のついた線香をくれた。
どうするの?と身振りで聞くと部屋で焚け、とのこと。

他のお客にそういうことをしている気配は無い。
どうやら私は、その子の”お気に入り”のお客になったようだ。
私には昔から「どこでも子供とはすぐに仲良くなる」という特技(?)があった。
日本ではもちろんそうだし、中国・台湾・香港でもそうだった。
その特技が、チベットでも通用するのかとひそかに思っていたのだが、むしろ日本や中華圏以上に通用しているようだった。

あるとき、旅館の部屋でぼうっとしていると、ドアがノックされた。
出てみると彼女で、何か言っている。しかし、よく意味がわからない。
そこで中国語で「聞き取れないよ」と言うと、私の耳元で、あらん限りの大声で叫んだあと、

「これで聞き取れたでしょ?」

そういうことじゃないんだ。鼓膜破れるかと思ったぞ!

どうもよく聞いてみると「私は買い物に行ってくるから、ちょっと旅館見てて」と言っている。

おいおい、オレは客だぞ!と言おうにも中国語でなんていうのかわからない。
それに、こんな女の子の頼みを断るのも気が引けた。彼女は両親がいない間は外出もできないに違いない。

よし、わかった!行って来い、と女の子を送り出し、付けっぱなしのテレビで中国製アニメを見ながら、ふと気づいた。

オレ、仕事やめて旅に出たのに仕事してる。しかもタダで!

それに、女の子の両親が戻ってきたらなんて説明すればいいんだ?気まずいじゃないか。

幸い、女の子はお菓子を買ってすぐに戻ってきたのでそういうことにはならずに済んだが。

帰ってきたその子としばらく一緒に遊んでやったのだが、普段一人でいる時間が多いせいか、本当によく笑う。
なんというか、全身全霊で笑う、という感じなのだ。見ていて感動さえ覚えるほどだった。
遊び方もパワフル。旅館中を引っ張りまわされる羽目になった。指を思いっきり噛まれたりもしたのだが、手加減なしでホントに痛かった。
それでも、彼女の笑いが見れるなら、まあいいかと思わせられた。

その後も、彼女は私の良い遊び相手だった。
「特技」を駆使して、この旅ですでにたくさんの子供たちと仲良くなったが、彼女が一番の”親友”だったと思う。

甘孜を出る朝、彼女はまだ旅館入り口のベッドで眠っていたので、別れの挨拶はできなかった。
心の中で「再見」とつぶやいて旅館を出たが、本気で別れが辛かった。

私は彼女のことを一生忘れないと思う。
これからチベットと言われたら、敬愛するダライラマ法王よりも、ラルンガルゴンパの絶景よりも先に、彼女の大声と、体全体で笑う姿を思い出すと思う。

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longyi

正午プラス1

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