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台湾の犬が、好きだ。

 

私が子供の頃は日本の街中でもよく「野良犬」に出くわし、時には追いかけられたりしたものだった。しかし行政側の努力(もっと露骨に言えば「駆除」)の結果であろう。今の日本の都市部で野犬と出会うなんて、余程のことが無ければあり得ないシチュエーションとなってしまった。安全な社会を目指すため、事故やトラブルの原因は根気よく取り除いていき、安心清潔な世の中にする、というような大義名分に従うなら、それも仕方の無いことなのかもしれない。

 

 

しかし、野良犬もいない街などというのはなんだかつまらないと私は思うのだ。

 

 

初めて台湾に行ったときは驚いた。大都会台北のド真ん中を飼い犬とも野良犬ともつかない犬が、飼い主もリードもないフリーダム状態で歩いているのをよく見かけるのだ。

かなり大きな犬もいて、近い距離ですれ違ったりするのでびびるが、向こうはこちらのことなんか意に介していない。尻尾を振って寄って来たりしない代わり、襲いかかってもこない。人間も犬も、お互いをただ「そこにあるもの」として自然な距離感でつきあっているように見えた。

どうも台湾でも野犬の駆除は行われているようなのだが、日本に比べて圧倒的に徹底されていない。というかこんな状況で徹底したら、間違えて飼い犬を捕まえてしまう可能性が大なのではないか。

 

私はこの状況に強い郷愁を感じると同時に、犬と人の距離感、付き合い方に深く感動した。

 

そのときから私の中では「台湾」と言われて真っ先に思い出すものは小龍包でも夜市でもなく”犬”である。観光地なんか行かなくても、台北をぶらついて犬をウォッチングしているだけで、心の中にこびりついたストレスや厭世感が静かに消えていくのだ。

 

 

そういうわけで台湾犬を深く愛する私であるが、その台湾犬から追いかけられたことが何回かある。今回はその内の2つ。同じ日に起こったことについて書こうと思う。

 

 

台北近郊の観光地「淡水」に行ったときのことだった。

淡水といえば、こんな風景(夕方の写真だが)。

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ロマンチックなデートスポットとして地元のカップル達で賑わっており、一人身の旅行者としては面白くないことこの上ない。

そこで、レンタサイクルを借りてとりあえずその場を離れようと思った。思いの他本格的なマウンテンバイクが借りられてしまい、本来の想定とは違うと思うが、ちょっと遠乗りをしてみようと走り出した。淡水は小さな街なので少し走ると台湾スタンダードと思われる郊外の風景が広がっている。

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た、楽しい!

 

異国で自転車に乗り、気持ちの向くまま走り回るのがこんなに自由を感じることだったなんて。

気分は絶好調、鼻歌どころか大声で歌を歌いながら疾走していた、そのときだった。

 

 

橋があり、橋の上は車線が減少していた。橋の手前で停止し、後方確認するとビュンビュンと車が通過していく。これは慎重に行かないと危ないな、と思っていると右のほうから犬の吼え声が。それも普通の声ではない。威嚇ではなく「お前、殺す!」という殺気のこもった、野獣のそれである。見れば、橋のたもとの民家の中から、犬がこちらに走ってくる。ああ、警戒されているな、などとのんきに見ていたが、そのとき二つのことに気がついた。

 

①犬は鎖でつながれていない。

 

②その家の庭には塀がない。

 

私は、車にかまわず橋に向かって猛ダッシュした。車に撥ねられる、というのは一つの可能性に過ぎないが、そこに留まっていたら犬に襲われるというのは5秒以内に確実に訪れる”今そこにある危機”だ。

感覚としては、犬は後方3メートルくらいまで追いついてきていたと思う。車の通行も多く、かなり際どい局面であったが、日ごろの行いがよほど良かったのか橋を渡り切ることができた。犬も、橋のこちらまでは追いかけてこないようだ。

しかし本当に危なかった。何回か海外旅行してきて、海外旅行保険の世話になるかもと思ったのは今回が初めてだ。今までなにげに走ってきたが、事情のわからない外国でサイクリングするというのはやはりそれなりに「冒険」なのだ。慎重に行こう、と思った。

 

 

その後街道は危ないと思い、脇道に入り探検をしていた時のことだ。

 

人気の無い住宅街を抜けていくとここでも、民家の庭の中から犬の「殺気吼え」が。先程のこともありイヤな感じはしたが、今度の家には塀と門がある。安心安心とタカをくくってゆっくり走っていたら、今度は自分の後方1メートル以内から犬の吼え声が。後ろを振り返ると、私の足に噛み付けるほど近くに犬が追いすがってきている。塀を乗り越えてきたのだ!思わず「おわっ!」と声を上げ、全力疾走。あまりの恐怖に完全に涙目である。

しばらく走って振り向くと、犬はこちらの敗走に満足し、走るのをやめ勝ち誇ったように遠吠えしている。た、助かった。。

 

 

1日に2回も犬に追いかけられるとは、平成の世とも思えない経験である。台湾に来ると昭和にタイムスリップしたようだ、という日本人がいるが、こういうことだろうか?「俺はオバQか?」と自分で自分に突っ込んでしまった。

 

それにしても、台北の犬たちの温厚さ、またはこちらへの無関心ぶりに比較して、郊外の犬たちのあの殺気に満ちた感じは一体何であろうか?飼い犬が、塀を乗り越えて襲ってくるか?普通。 

 

台湾の人間は、地方に行くほど人柄が暖かくなるという(私は、台北の人たちも充分暖かいと思うが)。しかし犬に関しては「地方に行くほど凶暴になる」という法則があてはまるようである。 

 

台湾の地方に旅行される方はくれぐれもお気を付けを。。

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