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バスを乗り継いで、再び成都に帰ってきた。

ここでビザの延長手続き。できあがるまで5営業日かかるというのでその間ホステルに宿泊する。
(結局すぐ中国を出たので延長する必要は無かったのだけど、このときは更に中国各地を見ながら南下する予定だったので)

この成都滞在で、またしてもいろいろ打ちのめされることになった。

何度も車に轢かれそうになった。なぜ人がいるのがわかっているのに、ことさらにスピードを上げて突っ込んでくるのか。

私が止めたタクシーに平然と乗り込まれたときは、一瞬何が起こったのかわからなかった。
腹が立ったが中国語でなんと言っていいのかわからないから日本語で抗議したら、近くで見ていた何の関係も無いオッサンに喧嘩売られそうになった。
私が日本人だとわかったからだろう。人を国籍や人種だけで判断するクズはどこにでもいるが、自分がその矛先を向けられると本当にショックである。
身の危険も感じたし、何より侮辱を受けた気がした。

私は私だ。

「日本人」なんていう漠然とした集団に対する彼の感情を、私という個人にぶつけられそうになった理不尽に、心底気分が悪くなった。

そしていつの間にか私も思っていた。



「中国人め!」と。



偏見に過ぎないことは頭ではわかっていた。
今までの旅でたくさんの中国人との良き出会いもあった。
私が中国人全体を一緒くたに判断して否定するということは、それらの出会いも否定することだった。
しかし、今回成都に着いてから本当に凹むことが多かった。上海以上だった。
チベットで非常に穏やかな出会いを多く経験した後だけに、余計に堪えた。

成都は茶館が中国一多い町だとネットで知り、路上の茶館の一軒に逃げ込んだ。
フリーWifiだったので、日本の友人にskypeで弱音を吐いた。

少し気持ちが落ち着き通話を終了。お茶を飲みながらインターネットを見る。
以前にネットで見て気になっていた四川風の「田螺」料理を食べさせるお店「三哥田螺」がこの茶館の近くにあることがわかった。

酒でも飲んで気分転換するか!と行ってみたら、ここがなかなかディープな店だったのだ。
店自体は小さくて客が入れるようなスペースは無い。
路上に出されたはっきり言ってかなり「汚い」イスとテーブルで地元民たちが酒を飲んで大声で盛り上がっており、その間を店員たちが忙しく飛び回っている。

普通の勢いでは、注文すらできないだろう。

私が「国」に「民族」に「個人」に対しどう考えるのか、ひいては、私はどういう人間なのか、何故かここが分かれ目だという気がした。


息を深く吸い込むと、辺りの中国人の声も圧するような大声を思いっきり出して、店員を呼んだ。

店員のうち一人が、気が付いてくれた。田螺と、ビールを注文する。

割合すぐに出てきた田螺は、すごい辛味と、肝の苦味が一体となって、下品だけれど飛びっきりのおいしさだった。
残念ながらビールは冷えていないが、この地にはビールを冷やす習慣が無い。これはまあ仕方が無い。

 

これがその、田螺。夜なので手振れしているが。

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ビールを飲んで、田螺を串で殻から出して頬張っているうちに、もう大丈夫、という気がしてきた。
私は要するに、旅している「場所」に心身ともに負けていたのだ。それを旅している国に八つ当たりしていた。旅人失格だった。
どこの国にだって嫌なヤツくらいいる。

でももうオールオッケー。このお店で注文して、夕闇の路上で地元の中国人に混じって田螺食べてるんだから。

見てろよ、もう割り込みなんかさせないからな。必要なら喧嘩だってする。
でもそれは「中国人」なんていう実体の無い、意味不明なものとするんじゃない。腹が立った相手「個人」との喧嘩だからな!
という物騒な決意を密かにしたのだった。

食べ終わり会計するとき、年配の女性の店員(おかみだろうか)が笑顔でお釣りを渡してきたので、こちらも笑顔で親指を立て「好吃!(おいしい!)」と言った。

なにかスカッとしたいい気分で、ホステルまで歩いて帰った。

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